読書家全員に一度読んでほしい1冊を紹介。『年収が10倍になる速読トレーニング』- 苫米地英人
苫米地英人さんが書いた『年収が10倍になる速読トレーニング』を紹介します。
まずこの本は、「速読」というタイトルがついていますが従来の速読本とはまったく違った切り口で語られています。
序盤でそのことは説明されますし、著者が350Pの経済学本をたったの5分で読んだ方法についても、「え?そういうこと?」と拍子抜けするような種明かしをしています。
乱暴に言うと「タイトル詐欺」だとも言える内容に少し残念に思った反面、著者は速読よりも「読書」そのものについて語っているということにすぐに気付かされます。
以下、私がこの本を読んだ感想を交えながら紹介していきます。
要約
読書は知識で決まる
「年収10倍」というからにはすごい速読術が書かれているだろうと思ったのですが、そうではありません。
この本は、「読書とは?」という本質的な部分を紐解きながら、読むスピードを上げていこう、という内容です。
そのため、他の速読本のようなパラパラめくって内容全把握みたいな超人技ではなく、内容の理解度は今まで通りのまま、速度6倍にすることを目標にしています。
そして、この本ではまず大前提として、「読書」というのは読み手の知識量で速さと質が決まるということを序盤に説明しています。
著者の苫米地さんはアメリカのイエール大学院に入学し、カーネギーメロン大学大学院に編入という素晴らしい経歴の持ち主です。
アメリカの大学院では論文も含めて2,000~3000冊の本を2年間で読む必要があるそうです。
これは単純計算で1日30冊以上。
1冊30分で読んだとしても15時間かかるのでその半分以下のスピードが求められます。
このような環境に身をおいていた苫米地さんは自然と速読のテクニックを身に着けたと言います。
そんな苫米地さんは著書の打ち合わせのために350P以上ある『FREE』という経済学本を読まなければなりませんでしたが、時間が取れず、やむなく打ち合わせの直前に読むことにしたそうです。
打ち合わせ直前のたった5分で350P以上を読破し、その内容をほぼ完璧に把握。著者の考えなどについて質問をうけてもしっかり答えられたそうです。
これは一般的にイメージされている速読に近い超人的なテクニックにも見えますが、苫米地さんに言わせれば違うのだそうです。
種明かしをしますと、 答えはとても簡単。特別な速読術を使ったわけではありません。著者のクリス・アンダーソン と同じか、おそらく私のほうがフリー経済について詳しい知識があったから、わずか五分で『FREE』が読めたというだけの話です。
本書より抜粋
いかがでしょうか?
「え?そんなこと?」と私は思いました。
苫米地さんはこれが速読の1つの真実であり、速く読むためにもっとも大事なのは読者の知識量であると結論づけています。
この知識をベースに、本の内容理解に必要なアウトライン、「ゲシュタルト」を構築できるのです。
ゲシュタルトがより鮮明であればあるほど、本の内容理解は楽になり、速度も向上するというのです。
これは、同じ本を2度3度読む人は容易にイメージできるのではないでしょうか?
1度読んだ本はある程度内容を把握しているので、内容の理解度も深く、ページをめくるのも速くなっているはずです。
このように本の序盤では速読とは、前提知識の上に成り立つものであるということを語っています。
しかしこれは、「知識があれば書いてある文章の内容を理解するスピードが速くなる」ということを言っているだけで、速読法とは言い難いです。
苫米地さんは、知識が十分にない人でも本を読むスピードを少しでも速くするために、文字を読むという物理的な速度を上げるための方法についてを続けて解説しています。
加速、並列で高速化
著者はこの本で紹介する速読法をハイサイクル・リーディングと名付けています。
これは脳の処理速度を高速化することで実現でき、そのためには以下の3つの要素があるといいます。
- すべての行動を加速化する
- 並列度を上げる
- 抽象度を上げる
この記事では、この3要素を高速化(加速・並列)と、読書の質の向上(抽象化)に分けて解説します。
加速とは、脳の処理速度を上げること。
並列はマルチタスクを可能にすること。
脳の処理速度を上げることも、並列作業を難なくこなすことも訓練によって可能であると苫米地さんは言います。
加速のトレーニングは単純に日常の生活すべてにおいていつもよりスピードアップすることを意識していくことで可能だといいます。
並列作業のトレーニングとして推奨されているのが、2冊の本を同時に開き、その内容を記憶するというもの。
速読術としては、目で文章を追うとき、同時に先の行を視界に入れる方法を紹介しています。
先の行を視界に入れることで、脳の深層で情報は処理されて、先読みした状態を作り上げることができるというのです。
そのためには素早く文章を読み理解しながら、同時に視界に入った次の行の情報も処理していく必要があり、そのために必要な要素が加速と並列なのです。
抽象化で質を上げる
続いて抽象度を上げるという要素について。
読書の質を上げるためにこの抽象化という概念を知っておくべきだと私は思います。
抽象化とは、多角的なを持つことと言い換えることができます。
1つの事実に対して、どのような考えを持っているか、どの立場に立っているかで感想が変わります。
呼んでいる本や記事の内容に対して賛成的な立場であれば、逆に反対の考え方だとどういう感想になるだろうかとイメージして読むと、新たな気付きが生まれます。
これが抽象度が上がった状態です。
そして筆者が特に効果的であるとおすすめしているのが、筆者の気持ちになって考えながら読むこと。
プロフィール、まえがき、あとがきをしっかり読み込んでから筆者にはどういう考えが背景にあったのかをイメージして読むのです。
そのイメージを構築するのはやはり、読書による知識量です。
抽象度の高い読書をすることで知識はより深まり、より抽象度の高い読書が可能になります。
こうして読書は雪だるま式にハイサイクル化されていきます。
新たな世界観を手に入れよう
本は筆者から読者に向けて、ハイサイクル・リーディングを通して新たな世界観を持ってほしいというメッセージで締めくくられています。
人はこの資本主義の中に生きている以上、お金の奴隷から抜け出すことができません。
しかしこの本の読者は、ハイサイクル・リーディングを習得したことで、自分の中に別の世界観を持つ第2のペルソナを描くことができます。
高い抽象度を持つ、あなたの知識の集合体のような別人格です。
第2のペルソナとしてイメージしてほしいのが、お金に因われない自由な世界に生きているあなた。
あなたが何かに迷ったときに第2のペルソナであればどう考えるか、違う世界観からの意見を持つことで人生がより豊かになると苫米地さんは語ります。
そのためにはたくさん本を読み、たくさんの知識をつけることが不可欠なのです。
感想・補足
私は本を読む最大の目的は「文章を通じて著者の考えを学ぶ」ことにあると考えています。
抽象化のパートで、そのことを再認識させられました。
人生という限られた時間のなかで、多くの本を読むことはとても大事です。
だからこそ、少しでも早く読める方法をと思って本書を開きました。
しかし実際は、速く読むことよりも読書とは何かという根本的なことを深く学べました。
もちろん速読のための訓練法も書いてあるので、実践し、少しでも多くの本を読めるようになりたい方にぜひ読んでいただきたい一冊です。
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