誰でも物理が好きになれる本『文系でもよくわかる 世界の仕組みを物理学で知る』- 松原隆彦

本の表紙にも書かれていますが、携帯電話はなぜ通じるのか、GPSの仕組み、液晶に画像が映るのは?など、身近にありながら詳しい仕組みがわからないものというのは沢山あります。

これらはものすごく頭のいい人達が作り出した仕組みで、僕みたいな凡人には到底理解できないような難解な計算の上に成り立っています。

なので本気で仕組みを理解しようと思っても中々難しいでしょう。特に僕は高卒だし、物理は嫌いだったので授業はいつも寝ていました。

この本の表紙がちょっと気になって読んでみたところ、稚拙な言葉ですが、めちゃくちゃおもしろかったのです。
世の中の様々な仕組みに使われている物理学の話を端的に紹介されていて、難しい数式などは一切書かれていません
さすがに1回読んだだけではわからなかった箇所もありますが、これだけわかりやすく興味を惹かれる本は中々ないでしょう。

本書では、物理学が応用されている身近な例を色々紹介していく形式となっています。
本記事は、特に面白かった箇所に対する感想を交えた、5分程度で読める要約となっています。

著者紹介

松原隆彦

1966年長野県生まれ。
高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所・教授。
京都大学理学部卒業。広島大学大学院理学研究科博士課程修了。博士(理学)。
東京大学大学院理学系研究科、ジョンズホプキンス大学物理天文学科、名古屋大学大学院理学研究科などを経て現職。
井上科学振興財団・井上研究奨励賞および日本天文学会・林忠四郎賞などを受賞。
著書に『宇宙に外側はあるか』『宇宙はどうして始まったのか』『目に見える世界は幻想か?』『図解 宇宙のかたち』『宇宙は無限か有限か』(以上、光文社新書)、『現代宇宙論』『宇宙論の物理(上・下)』(以上、東京大学出版会)、『大規模構造の宇宙論』(共立出版)。『私たちは時空を超えられるか』(サイエンス・アイ新書)、共著に『宇宙のダークエネルギー』(光文社新書)などがある。

引用元 – ときに温泉に浸かって宇宙について考えました。|松原隆彦さん、自著を語る。

要約

本書は全部で7つの章にわかれています。

本記事では、これらを3つのパートに分けて解説していきます。

1.物理学を知る

1~2章は物理学という学問についての導入といった雰囲気です。

ウォール街には物理学を駆使して株価を予想し、利益を得ている集団がいる。

1章で最初に紹介されるのはこの事実です。
実際にどのように株価の予測につなげているかの詳細は語られていませんが、驚きです。

物理は身近にあって、しかもいろんなことに応用され、時には株価の予測まで成し遂げてしまう、物理という学問がいかに奥深いかがわかります。

そして物理学とはどういう学問なのか、ということを2章でくわしく解説しています。

ものすごく端的に言うと、動き・変化の根本原理を解き明かしていく学問だと言えるでしょう。

僕たちの身体も、目の前にある液晶も超細かく見ていけば原子の集合体です。

その動きがどのような法則に則って動いているのか、変化していくのかを突き詰めた結果、僕らの暮らしを豊かにする発明が生まれている。

2.身近な物理学

3~5章では、身近なところに使われている物理学を超わかりやすく説明するパートです。
※他の章も説明パートなんですが、ここは特に身近な事例の紹介がメインですね。

難解な数式を使わずにわかりやすく説明されていて、雑学としても知識が深まるいい話がたくさん紹介されています。

個人的に興味深いのは5章最後のAIの話

人間の意識というのも紐解けば電気信号のやりとりである、というのは感覚的にわかるでしょう。

機械学習の分野に人間の脳の構造をモデルにしたニューラルネットワークという仕組みがあるが、これがより人間の脳構造に近づくと意識を持つのか?
その意識は僕たち人間と同等のものとして扱うべきものなのか?

哲学的で深く考えさせられますね。

3.相対性理論と量子論

読んでて最も面白いと思ったのが6~7章で紹介される相対性理論量子論の話。

どちらも聞いたことくらいはあるだろうし、僕もなんとなく理解している程度でした。

GPSの仕組みを例に、まずは相対性理論について語るわけですが、続いて光の話、最終的に量子論へとシフトしていきます。

相対性理論の興味深い部分だけをざっくり語ると、1秒、1分といった時間の長さは一定ではないということ。

つまり時間とは人間が勝手に作り出した概念であり、光の速さによって相対的に決まる、可変なものである。

これだけ聞いてもいまいちわからないと思います。
時間を軸に生きている僕たちにはいまいち受け入れられないことなのは間違いないでしょう。

そして光。光はとても不思議で、粒子であり、波である

もともと物理学では粒子なら粒子だし、波なら波でどっちか一方にカテゴライズされるはずだと考えられていたそうです。
僕らのご飯も、肉であり野菜でもある、なんてことはありえないからここは感覚的にわかると思います。

でも長年の研究の結果、光はどちらの性質ももつという一見矛盾した事実を受け入れるしかないことになりました。

これについては未だによくわかっていないけど光がそういうものだと理解するしかないのです。

そしていよいよ量子論

量子とは、エネルギーの最小単位。
この量子が、先程説明した「波であり粒である」という性質を持つことが知られている。
量子は光の正体が粒子なのか波なのかを解き明かす過程で明らかになったのです。

原子の周りを漂う電子もこの量子に分類されます。

量子論のおもしろい部分をざっくりと説明すると、なんと量子はこの目で観測するまではどういう状態なのかわからないというのです。

ちょっと意味がわかりませんね。シュレディンガーの猫という実験はご存知でしょうか。

箱の中に猫と毒瓶を入れ、箱を開けるまで猫が生きているのか死んでいるのかがわからないというアレです。

この実験の解釈は「箱を開けて確かめるまでの間、猫が生きている状態と死んでいる状態が共存している」というもの。

全然ピンと来ませんよね笑

しかしながら、この生きている状態と死んでいる状態が共存しているという摩訶不思議な話がこの量子論によって証明されているのです。

なぜそうなのか、まではわかっていません。量子というのは不思議で、誰かが観測して始めてそのふるまいが決まる意味不明なものなのです。

これによってSFのパラレルワールドが実在するかもしれないといいます。
ちょっと夢がある話ですよね。

残念ながらパラレルワールドを確認することは現状できませんが、理論上は存在することになるのです。

感想まとめ

タイトル通り、文系でもよくわかる非常に面白い内容でした。

特にちょっと詳しく書かれている系の本だと相対性理論や量子論の説明が難しくて、全然わからなかったのにこの本はすっと頭に入ってきてサクッと読めました。

メールやGPS、液晶の仕組みなど例も本当に身近で、大人の僕でも十分楽しめる本です。

スマホ世代で物理に壁を感じている中学生・高校生にもぜひ読んでほしいですね。

次の1冊

同じように雑学感覚で学問を理解できる本を紹介します。ぜひ読んでみてください。